もしもあなたと不倫したら case.4 加藤くん
はいさーいっ!!
お待たせしました不倫シリーズ第4弾!
最終回はシゲちゃんです( ◜௰◝ )
こじらせにこじらせまくりました。
自担なので( ◜௰◝ )
自分の願望が詰め込まれてます( ◜௰◝ )
自担なので( ◜௰◝ )近
本当は別の設定で書いていたんだけど9割終わったとこでなんか違くて書き直しました笑
最後まで楽しんでいただけると幸いです( ◜௰◝ )れつごー
case.4 加藤シゲアキの場合
夫の浮気現場に遭遇し、家を飛び出して2週間が経った。
その日は地元の同窓会で、実家に泊まる予定だったがなんとなく気分が変わって家に戻ることにした。
今思えば何かしらの勘が働いていたのかもしれない。
夫に帰ることを連絡しないまま帰ったのがまずかった。
帰宅すると玄関に見慣れない女物の靴があり、寝室では夫が知らない女と寝ていた。
そのあとの事は細かく覚えていないけれど、手の届くありとあらゆる物を夫に投げつけて寝室をぐしゃぐしゃにした気がする。
そして最低限の着替えを鞄に詰めて家を飛び出した。
あれから毎日のように夫から着信が入るが一切無視。
実家にも来たが父に門前払いされ、すごすごと帰って行った。
『俺が悪かった。ちゃんと謝りたい。帰って来てくれ。』
『魔がさしたんだ。ちゃんと説明させてほしい。会いたい。』
『頼むから帰ってきてくれ。』
そんなメールが何度も届いたが知らない女と寝ていたあの家には気持ち悪くて戻れるわけがないし、知らない女に愛を囁やいたであろう夫の口から謝罪なんて聞きたくもなかった。
そもそも浮気相手を家に連れ込む時点で初犯とは思えなかった。初犯だとしたらあまりにもバカ過ぎて呆れる。
普段妻と寝ているベッドで他の女を抱ける神経も理解できない。
どちらにしても到底許せるわけがなく、かといってすぐに離婚へ踏み切れない。そんな状態が続いていた。
『久しぶり。元気?こっち戻って来てるらしいじゃん。』
そんな時、夫からの大量のメールに混ざって懐かしい人から連絡がきた。
『久しぶり。こっち戻ってるよ。ちなみに元気ではないです。』
『だろうね笑。久々に飲みにでも行く?』
『行く。』
『了解。じゃあ次郎吉で。』
同級生の誰かから噂を聞きつけたのであろう。そういったゴシップは広まるのが異常に早い。
約2週間ぶりにまともな化粧をして待ち合わせの店へと向かう。
〈次郎吉〉は私たちの行きつけの店で、彼と飲みに行くのは決まってそこだった。
「お待たせ。」
「久しぶり。ビールでいい?」
いつものカウンターの奥に座っていた彼はすでに飲み始めていて私はその横に腰を下ろした。
「「乾杯。」」
キンキンに冷えたビールが喉を通っていく。
「ぷは~!おいしぃ~~~!!!」
「なんだ元気そうじゃん。」
「元気じゃないよ。元気じゃないけどビールは美味しい。」
「体は元気ってことね。てきとーに頼んだけどなんか食べたいのある?」
「しげちゃんのチョイス間違いないから大丈夫。」
彼は学生時代からの友人で、地元を離れてからもこうして時々飲みに行く貴重な男友達。
私が結婚してからはお互い遠慮して連絡も取らなくったので会うのが3〜4年ぶりになってしまったが久しぶりに会っても居心地の良さは変わらない。
「てか同窓会なんで来なかったのさ。」
「俺苦手じゃん、あーゆーの。会いたい奴なんて自分から会うし。」
「しげちゃんらしいわ。で、誰から聞いた?」
「こやま。」
「だぁ~!やっぱり。」
「そんな詳しくは聞いてないよ。浮気されて家飛び出してきたってことしか。」
「それが全てですけどね。」
運ばれてきた料理に手をつけながら事のいきさつを話す。
「…というわけで実家に引きこもってます。」
「なるほどね。なんていうか、旦那すげぇな。家に連れ込むってなかなかじゃね?」
「ありえないでしょ?バカ過ぎ。ほんっと最低。家に連れ込む神経が理解できない。生理的に無理。」
「で?これからどうすんの?」
「わかんない。あんなことがなければ別に普通に仲良かった…つもりだし、でも今は気持ち悪くて顔も見たくないもん。」
「でも好きなんだ?」
夫のことを好きだったか。
それは極めて難しい質問だった。
なんとなく恋愛して、結婚に憧れ始めた頃にプロポーズしてくれて、収入などの条件を加味して結婚を決めた。
【結婚は2番目に好きな人としろ】なんて誰かの言葉を鵜呑みにして、それならこの人だろうと決めたのだ。
「ん~、好きかと言われると難しい。恋愛感情とかじゃなくて、なんていうか…いるのが当たり前だったしさ。…そういうのがダメだったのかな。」
「俺は結婚してないからそーゆーの分かんないけど、夫婦ってそういうもんじゃないの?別にダメってことないと思うけど。」
会うのが久しぶりとは思えないくらい彼には何でも話せてしまう。
いつだってそう。
私の悩みを聞いてくれて、一緒に考えてくれて、自分の意見もちゃんと言ってくれる。
「…てかさ、しげちゃんはどうなの?いい人いないの?」
「いない。」
「即答じゃん笑。あの歯科衛生士の彼女は?」
「とっくに別れたよ。」
「ふーん、つまんないの。」
そう言いながらどことなく安心している自分がいる。
自分は結婚しているくせに彼に特定の相手ができるのが嫌なんてわがままでしかないのは自分でも重々承知だ。
きっと出会ってから今日までの間、どこかでパズルのピースがハマっていたら付き合っていたかもしれない。
私にとってそういう存在だった。
夫が2番目に好きな人だとしたら、彼は1番好きだった人。
出会ってから10年近く経つ今でも私の中で特別な人。
ここだけの話、周りの友達は誰も知らないが一度だけ酒の勢いで寝たこともある。
あの時ちゃんと好きって言えばよかったのに関係が壊れるのが怖くなって何事もなかったように翌朝また友達の顔をした。
彼から好きとも言われなかったので酒の過ちだったんだと自分に言い聞かせた。
それからほどなくして私は就職で地元を離れて、新しい土地で恋をして結婚して。
私が結婚してから彼に連絡を取れなくなったのはどこかにまだ恋心が残っているから。やましい気持ちになるからだった。
「…ってお前人の話聞いてる?」
「へ?ごめん。聞いてなかった。」
「聞けよ。なに、もう酔った?」
「いや、平気。なんかさー、あの頃に戻りたいなって。」
「あの頃?」
「うん。…学生時代に戻ってさ、慶ちゃんとかみんなで遊びに出かけたりさ、しげちゃんとツタヤでバカみたいに映画借りて1日中見たりしたい。そんであの時やっとけばよかった~!ってことやってさ。…恋愛も全部やり直したい。」
「浮気しない人と?」
「だね。」
二人で目を合わせてクスクスと笑う。
「あ~ぁ、私しげちゃんと結婚すればよかった。」
お酒がまわってきてつい本音が漏れる。でもまぁ、きっと彼は笑い流してくれるだろう。
「ほんとだよ。」
想像していなかった返答に酔いが一瞬でどこかへ飛んでいった。
声のトーンも彼の目も悪ノリしているようには思えない。
「な、なに急に。…そんなこと言ってその気ないくせに。」
「お前だって。」
「あたしは本音だもん。」
「俺だって本音だよ。」
「何それ。今まで全然そんな感じなかったじゃん。」
「それはお前もだろ。俺はずっと好きだったし。」
「あたしだってずっと好きだったもん。」
「うそつけ。普通に彼氏いたじゃん。」
「あれはだって、しげちゃんがその気ないと思ってたから。ていうかしげちゃんだって彼女いたじゃん。」
「俺こそお前がその気ないと思ってたからだし。あの日だって…」
私たちは何を言い合いしてるのだろうか。
ヒートアップしてお互い後に引けず、長年秘めていたはずの気持ちをなぜかけんか腰にあっさり暴露。
「なんでもいいけど店そろそろ閉めるぞ。」
謎の言い合いにピリオドを打ったのは次郎吉のおっちゃん。
時計を見ると閉店時間を5分ほど過ぎている。
ちょっとくらい融通きかせてくれてもいいのにと思いつつお会計してすごすごと店を出た。
「…おっちゃん相変わらずだね。」
「料理は美味いけど愛想がないんだよなぁ。」
「融通もきかないしね。まぁ、でも今日はいいタイミングだったか。」
「だな。」
さっきはアドレナリンが出ていたから感情に任せて喋れたが、夜風にあたって冷静になると何から話したらいいか分らない。
行くあても決めずなんとなく同じ方向に歩き出す。
「あの日も次郎吉で飲んだんだよな。」
あの日。私たちが一線を越えた日。
「飲んでた。なんだっけ、映画の話で盛り上がってさ。しげちゃん家で見ることにしたんだよね。」
「そうそう。…まぁ、映画は結局最後まで見れなかったけど。」
見ている途中でどちらからともなくそういう雰囲気になり、いつの間にかお目当ての映画はBGMになってしまった。
「あの時にちゃんと好きだって言えばよかったってこと?」
「そうだよ。言ってくれればよかったのに。」
「だってさ、酒の勢いだと思われたくないじゃん。まぁ酒の勢いだったんだけど。だから翌朝ちゃんと言おうと思ってたのにお前があまりにも余所余所しいからさ。あぁ、これは違うんだなって。」
確かにあの時浮かれてると思われたくなくて素っ気ない素振りをしてしまった。
「どんな顔していいか分かんなかったんだもん。恥ずかしいしさ。あと、好きでそうなったわけじゃないのかもって考えたら怖くなって平気なフリしちゃったの。」
「なんだよそれ。すれ違いもいいとこじゃん。俺だせぇーなー。」
そう言って彼は空を仰いだ。
少しだけ前を歩くその背中に抱きつきたい衝動に駆られる。
彼は今の私でも受け入れてくれるのだろうか。
「…ねぇ、今も好き?」
「はぁ?そういうこと聞く?家出人妻のくせに?」
そりゃそうだ。私はここで胸高鳴らせてる場合じゃない。
「…好きだよ。こんなの多分言うべきじゃないけど、久しぶりに会っても思う。やっぱ好きだわ。」
あの頃ずっと欲しかった言葉。いざその言葉を聞くと涙が出そうになる。
私のほうが夫よりよっぽど罪深いじゃないか。涙が出るほど嬉しいこの気持ちは多分浮ついた気持ちじゃないもの。
「なんつー顔してんの笑。」
自分から聞いておいてなんて言葉を返せばいいか分からず黙り込む私の頭を彼はクシャっとした。
「あの…」
「いいよ。どうせ頭ん中ごちゃついてんだろ?また今度ちゃんと話そうよ。…酒の勢いって思われたくねぇし。家まで送るわ。」
歩き慣れた道を手が触れそうで触れない微妙な距離で歩く。
「落ち着いたら連絡して。俺基本家で仕事してるからいつでも動けるし。」
「まだあそこのマンション?」
「そう。親は仕事で東京に引っ越したけど俺はあそこ気にいってるから自分で借りてる。」
学生時代はよくあの家で映画を見てたもんだ。
「じゃあ、おやすみ。」
「うん、送ってくれてありがとね。おやすみ。」
部屋に戻ってベッドに寝転ぶ。
今日のこと昔のこと、彼のこと夫のこと、色々なことを考える。
私はどうすればいいのか………いや、どうしたいのか。
寝付けないまま朝になってしまったので答えを出すことを諦めて無理矢理昼過ぎまで寝ることにした。
ピンポーン。
「いや、来るの早っ。」
その日の夜、答えが出せないまま足は彼の家に向かっていた。
「全然まだ頭の整理ついてないんだけどね、…ダメだなって思ったんだけどやっぱりしげちゃんに会いたくて来ちゃった。」
その瞬間はぁーっと彼の深いため息が聞こえた。
「お前さぁ〜…なんなの?無自覚なの?この状況わかってる?」
「…分かってるつもりです…」
彼は怒ってるような呆れてるような目で私を見る。当たり前だ。
家出中の人妻が男の家に来るなんて軽蔑されても仕方がない。
「…今日はもう酒の勢いって言い訳できないけどいい?」
小さく頷くと玄関が開いて招き入れられた。
部屋に入った瞬間からはお互い堰を切ったように求めあって、何もかも忘れて本能だけで動いた。
大きめの鎖骨も首元のほくろも丸い指先も柔らかな唇も全てあの日の記憶のままでその全てが愛おしい。
あの日と違うのは、ちゃんと目を合わせることができたこと、好きって口にできたこと。
あの時は好きって言っていいか分からずその言葉を何度も飲み込んでいたから。
…いつのまにか眠っていたようで、美味しそうなコーヒーの匂いで目を覚ます。
せっけんの香りがする彼がすぐ横でこちらを見ていた。
「浮気者さん、コーヒー飲む?」
こんな時でも彼は少しいじわるで、そこが昔から好きなんだよって教えてあげようと思った。
これまでの事、これからの事、ちゃんと話しあって、もうすれ違わないように。
え?なに?無理じゃない?無理無理。ちょっと早急に映像化して。
うん。そう。シゲアキさんはなんていうかやっぱりリアルを求めちゃう。
生々しいというか、人間くさいというか。
なんにせよあれだよね。
書きながら加藤さんの幸せを願ったよね。
いやぁ、不倫シリーズいかがでしたでしょうか。
私自身はめちゃくちゃ楽しかったので皆様にも楽しんでいただけてたらこれ幸い。
番外編とか…別パターンも…そのうち…書く…かも…
しれないので気長にお待ちいただけたら嬉しいです( ◜௰◝ )
ちゃお!